2000年の団体発足以来、私たちは支援先であるフィリピンの児童養護施設のCMSPへ毎年訪問し続けています。フィリピンが台風の大災害に見舞われた年や日本で大きな災害が起きた年であったとしても、私たちはボランティアに携わってくれた多くのメンバーたちを可能な限り集めてフィリピンの子供たちに一同に会いに行くようにしています。
私たちはこの年に一回の訪問を“ツアー“と呼び、約50人から60人くらいのメンバーとともにフィリピンを訪問します。ツアーへ参加してくれるメンバーやボランティア活動に興味を持っている人たちは全て渡航費を実費で負担するため、その旅費(60人の訪問で約900万円近くになります)を寄付金としてそのまま送金したらいいのではないか、という声をいただくことがあります。
実費でボランティアとしてフィリピンの子供たちに会いに行き、その費用を寄付金として納めないのには理由があります。それは、パラサイヨが大切にしている子どもたちへの2つの支援の柱のひとつである、「直接会いにいくこと」という思いがあるからです。多感な年頃の子供たちは私たち大人が思っている以上に、様々なことを感じ、直接触れ合うことを楽しみにしてくれており、訪問自体が大きな子どもたちの支援になっているからです。
子どもたちの成長を見守ること
私たちが多くのメンバーたちとフィリピンを直接訪問する大きな理由のひとつに、子供たちの成長を見ることがとても楽しみ、という理由があります。私たちパラサイヨが2000年に初めてのツアーで出会った子どもたちは、日本で言うところの小学生・中学生くらいの子どもたちでした。現在では、その子どもたちも成長し、日本で開催するイベントを通していただいた支援金で彼らは大学へ進学し、就職先を見つけ、結婚して家庭を持っている子どもたちもいます。
私たちが日本で仕事や学業を行っているこの瞬間も、子どもたちは毎年少しずつ成長し、勉強をし、自分の家族のために将来の夢を見つけ、社会へと巣立っていきます。私たちは、その姿を毎年見守り、毎年訪問することによって「来年また私たちが来るときまで、がんばって」と背中を押すことになるだろうと信じています。
児童養護施設には在中しているスタッフがおり、親がいない施設の子どもたちにとって私たちの訪問や触れ合いは本当の家族のようで、その応援してくれる存在は大きく、それだけで日々の励みになっているそうです。一年に一回の施設への訪問が終わるときに「僕、来年までしっかり勉強がんばるから、きっと来年も会いに来てね」と声をかけてくれる子どもがほとんどで、私たちの存在が彼らのためになっていることをいつも感じることができます。遠く離れた日本にいる私たちの存在が彼らの毎日のがんばりになっていること、そんな家族のような彼らを見守る存在で私たちはあり続けたいと思っています。
たった数日間の中でも、気づきを与えること
数日間のツアーで私たちと子どもたちの楽しみの一つになっているのがお互いに準備をすすめてきたイベントの数々です。私たちパラサイヨメンバーは、日本で何カ月も前から子どもたちが喜んでくれそうなイベントを考えます。全員で1個のイベントを考えることもあれば、4つくらいのチーム別にいろいろなイベントを用意していくこともあります。特に私たちメンバー側が毎年盛り込むのは、「将来の夢へのきっかけを見つけられるようなイベント」です。
これはただ一緒に遊ぶだけではなく、教育的な意味や勉強がしたくなる仕掛けを作り、それをきっかけに社会へ出ることを楽しみにして欲しいという願いがあります。例えば「僕らの市場」というイベントを数年前に行い、大きな子どもたちは市場に出す商品の買い付けから、生産から値付け、販売までを模擬体験できるように企画をしました。
小さな子どもたちは消費者になって限られた仮の紙幣でどのお店で何を買うのかを決めます。その結果一番多くの利益を上げたお店の優勝というイベントです。児童養護施設の中の情報は限られており、フィリピンという国だけでも日本に比べれば情報が多いとは言えません。そんな中で年に1回のこの機会で、自分の得意なことや好きなことに気付いてもらうきっかけになればと、こうした気づきのイベントを毎年用意しています。
もちろん、それだけではなく子どもたちも私たちを喜ばせてくれるようなイベントやダンスをたくさん準備してくれています。子どものダンスのレベルは、驚くべきほど高く、日本でダンサーなどをやっていたメンバーなども舌をまくレベルです。ただ、子どもたちも私たちと一緒に踊ったりすることを非常に楽しみにしてくれており、彼らも私たちのために数ヶ月間の練習をしてくれて私たちを待ってくれています。
卒業生を激励し送り出すこと
私たちが毎年施設を訪問するということは、児童養護施設を卒業し大学や専門学校などそれぞれの道へと進んでいく子どもたちも必ずいます。訪問ツアーでは、そんな子どもたちの卒業式を行いさらなる励みとして欲しいと考えています。私たちが最優先に支援しているのは卒業生たちの学費とそれに伴う生活費です。他の支援団体は児童養護施設内での生活費や食費だけの支援に限っていますが、大学や専門学校で学ぶことが彼らの将来の仕事の選択肢を広げることに密接に繋がるため、私たちは最優先でこの学費のために支援金を使用することを約束してもらっています。
そんな将来に向けて1歩を踏み出す子どもたちの背中を精一杯押して激励するのが、ツアー中に実施する卒業式です。卒業式を終えて、それぞれ専門学校や大学に進学して施設を出ても、翌年の私たちの訪問にあわせて施設に戻ってきてくれる子どもたちもいます。進学先が遠く、翌年私たちがツアーに来たときは会えない子も中にはいますが、私たちはどんなに離れていてもずっと応援していることを忘れないでほしいということを伝える大事な瞬間です。
CMSPの代表であるダイナは、「イベントで収益がでなくて支援金が少なくなっても、毎年必ず来ることだけは止めないでほしい。子どもたちは何よりもあなたたちに会うことでパワーをもらっているから」と毎年伝えてくれ、私たちは毎年施設に直接こどもたちに会いに行くようにしています。
私たちは今年も8月に訪問を予定しており、今年も来年も、再来年も、こどもたちの励みになると信じてずっと子どもたちに会いに行きます。